第1回 国際癌治療増感研究協会 菅原賞

国際癌治療増感研究協会の設立者であり、現在名誉会長として協会を支えて下さっている菅原 努先生のお名前を頂戴したこの賞は、癌治療増感に関する研究で多大なる貢献のあった研究者に贈られます。

鍵谷 勤 氏

<主な研究テーマとその成果>

1980 年以来、放射線による生体損傷の化学的研究を行っている。

(1)腫瘍内に存在する放射線抵抗性の低酸素細胞の放射線感受性を増感するニトロトリアゾール誘導体の研究では、DNA 塩基の放射線化学的研究、細胞および動物実験による基礎的研究を経て、癌治療の臨床研究に進んでいる。IAEA の 6 カ国の国際共同臨床研究によって、重篤な副作用もなく、第 III 期子宮頚部癌の放射線治療効果の増大が明らかになった。さらに、12 カ国による国際共同臨床研究によって、10 種類の癌の放射線治療においても効果が明らかになった。

(2)放射線による正常組織内の酸素細胞の損傷を防ぐ水溶性ビタミン-E 誘導体の研究では、細胞および動物を用いた国際共同研究によって、放射線防護効果が明らかになった。

<略歴>

1927年生まれ。
1952年 北海道帝国大学理学部化学科卒業。住友化学工業(株)新居浜製造所研究部を経て、京都大学工学部(福井謙一研究室)へ。
1961年より助教授を勤め、
1963年~1978年 日本原子力研究所高崎研究所客員研究員・第一開発室室長を兼務する。
1968年 京都大学工学部教授(石油科学科触媒物理学担当)。
1990年 定年退官し、京都大学名誉教授となる。
1990年~1999年 (財)体質研究会理事・主任研究員
現在 (財)京都パストゥール研究所顧問教授
国際原子力機関主任科学研究員 (放射線治療担当)

<国際癌治療増感研究協会と>

協会設立発起人のひとり。協会設立時より理事を務め、1992-1995年 専務理事、1994-1997 年 副会長(1994-1995年は専務理事兼務)として協会の運営にあたる。菅原先生と共に協会をつくり、育て上げた人物である。

<推薦者>

西本 清一 氏
京都大学大学院工学研究科教授 (物質エネルギー科学)

<推薦理由>

鍵谷先生は、生体関連物質の放射線化学に関する研究を通じて、細胞致死の原因となるDNA塩基の放射線損傷について新しい機構を明らかにした。また、「腫瘍の放射線治療を増強する低酸素細胞増感剤の開発」を目標に掲げ、放射線化学、放射線生物学、および放射線腫瘍学の3分野にまたがる集学的研究を展開し、低酸素細胞増感化合物の構造-物性-活性相関を明らかにするとともに、低毒・高活性なニトロアゾール系増感化合物を開発するためのフッ素化修飾法を見いだした。さらに、正常細胞の放射線損傷を防ぐ防護化合物の作用に関する国際共同研究を推進し、水溶性ビタミン-Eの放射線防護効果を明らかにしている。これらの研究成果は、内外で高い評価を受けている。

<連絡先>

鍵谷 勤
京都市左京区吉田河原町14 (財)近畿地方発明センター内 鍵谷勤研究室
TEL: 075-761-0086
FAX: 075-761-2993