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<研究テーマ>インスリン様増殖因子ネットワークを標的とした
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昭和62年3月 | 東北大学歯学部歯学科卒業 |
平成3年3月 | 東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了(歯学博士) |
平成3年4月 | 東京医科歯科大学歯学部歯科放射線科医員 |
平成4年4月 | 日本学術振興会海外特別研究員 (米国Thomas Jefferson University留学) |
平成6年10月 | 東京医科歯科大学歯学部歯科放射線科医員 |
平成7年3月 | 東京医科歯科大学歯学部歯科放射線学講座助手 |
平成12年4月 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 分子診断・治療学分野助教授 |
<受賞研究>
インスリン様増殖因子ネットワークを標的とした癌治療増感
<研究目的>
I 型インスリン様増殖因子受容体(IGF-IR)は、その構造がインスリン受容体と類似した膜貫通型チロシンキナーゼで、IGF-I,IIの結合により活性化を受ける。さらにPI3-kinaseやMAPK等のeffector kinaseを介し、最終的に細胞増殖、トランスフォーメーション、アポトーシス抑制、分化、放射線抵抗性等多様なphenotypeに影響を与えることが知られている。また、乳癌、肺癌、脳腫瘍、大腸癌などでIGF-IRの過剰発現が認められ、そのような場合、予後が有意に悪くなることが報告されている。in vivoでは、IGF-binding protein(IGF-BP) familyによるIGF-I,IIの抱合/解離を介したIGF/IGF-IR結合制御機構やIGF-BP proteaseによるIGF-BPの分解機構が存在し、複雑なIGFネットワークが形成されている。本研究は、腫瘍をとりまくこのようなIGFネットワークを種々の方法で撹乱し、それが放射線や抗癌剤による癌の治療増感法として機能しうるかについて検討するものである。
<研究方法>
IGF-IRに対する中和抗体(aIR3)や特異的阻害剤(Tyrphostin AG 1024)を用いて、種々のヒト腫瘍細胞株の増殖能がどのような影響を受けるか、また電離放射線や抗癌剤によるアポトーシス誘導能およびコロニー法による感受性の変化をin vitroで検討する。次に、ヌードマウスに腫瘍を移植して、aIR3やTyrphostin AG1024処理と放射線、抗癌剤との併用効果をgrowth delay assayにより検討する。さらに、IGF-IRの950番目でtruncateした変異受容体(D950)のcDNAを、tetracyclinで発現が誘導されるpromoter systemを利用して腫瘍細胞に導入し、in vitroおよびin vivoにて上記と同様な実験を行い、D950発現の有無による影響を調べる。D950は内因性のIGF-IRとhybridを形成し、IGF-IRの機能を抑制することが可能である。IGF-IR(-/-)細胞にこの受容体を発現させても放射線抵抗性は獲得されないことを既に確認した。IGF-IRの機能を直接抑制する上記手法に加え、可溶型IGF-IR(D486)(細胞外に分泌可能)やIGF-BP 3を腫瘍細胞に発現させ、細胞外でのIGFスカベンジによる効果についても検討する。IGF-BP3は、細胞表面に受容体をもちIGF-IR非依存的にアポトーシスを引き起こすことも知られており、効果が期待される。
<今までの研究成果>
これまでに、IGF-IRの足場非依存性増殖能に関わるIGF-IRの重要なドメインを同定してきた(Li et al., J.Biol.Chem.,1994, Miura et al., Cancer Res., 1995, Miura et al., J.Biol.Chem.,1995, Hongo et al., Oncogene, 1996)。 また、IGF-IRの発現が細胞に放射線抵抗性を付与することを初めて報告した(Nakamura et al., Exp.Cell Res., 1997)。現在放射線抵抗性に関与するIGF-IRドメインとシグナル伝達機構の解析が進行中で、 Y950 (IRS-1, Shcの主要結合部位でPI3-kinase,MAPKを活性化しうる) の変異、C末端ドメイン(14-3-3タンパク結合領域を含み、Raf-1,MAPK活性化にも寄与)の欠失それぞれ単独の変異では放射線抵抗性は全く失われず、二重の変異ではじめて喪失することがわかった。このことは、それぞれの領域からredundantな放射線抵抗性シグナルが発せられていることを示している。さらにそれぞれの領域から発するシグナルにPI3-kinase、MAPKがどのように関与しているのかを詳細に調べている。野生型IGF-IRを発現する細胞では、PI3-kinaseを特異的に抑制する低濃度のwortmannin処理によって放射線増感は得られなかった(Tezuka et al., Clin. Cancer Res., 2001)。
<予測される研究結果>
電離放射線によるDNA損傷の修復や組み換えに関わる遺伝子群(RAD50、RAD51、
etc)は、古くより遺伝学的手法を用いた酵母の放射線感受性変異株の分離により発見されてきた。これらの殆どの遺伝子はゲノム維持に重要な機能を果たすことから、その同族遺伝子(homolog)は、ヒトを含む哺乳動物細胞に至るまで進化上保存されていることが近年判明している。本研究では、まず発芽酵母の系におけるゲノムスケ−ル解析により放射線感受性に関わる遺伝子を探索し、新規遺伝子の同定を目標とするが、一旦、遺伝子が発見されれば、ヒトゲノム上でのhomologを探索し、放射線生物学的意義の検討が可能と考えられる。これらは、将来的に癌治療の感受性予測や新たな増感法開発に向けた新規分子標的となる可能性がある。
<連絡先>
柴 田 徹
京都市左京区聖護院川原町54京都大学医学部附属病院放射線医学教室
TEL: 075-751-3419
FAX: 075-771-9749
International Association
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http://www.iasct.jp/ ]
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