6th Annual Meeting on the Sensitization of Cancer Treatment
一般講演(3) 【分子標的増感法−1】
No. 13低酸素、低pH、及び低栄養誘導 Apoptosis と p53 status の相関
大屋夏生・板坂 聡・山本智香子・平岡真寛
京都大学大学院医学研究科放射線医学講座・腫瘍放射線科学
【目的】
腫瘍組織は主として血流の低下により低酸素、低pH、低栄養などの正常組織とは異なる微小環境下におかれることがあり、それらの腫瘍細胞の動態に及ぼす影響がさまざまな角度から検討されている。本研究では、p53 status の異なる2種のヒト melanoma 細胞株をこれらの微小環境下に培養し、アポトーシスの誘導を経時的に測定し、p53 status との相関を検討した。【方法】
ヒトメラノーマ細胞株 Be11 (p53 Wild-type) 及び MeWo ( p53 Mutant) の2種の細胞を、5 mmHg O2 (Hypoxia) 、0.5% FCS (Starvation) 及び pH 6.5 (Acdosis) の各条件下に持続培養し、一定時間後に培地内の浮遊細胞を捨て付着細胞をトリプシン処理により回収し、Annexin V / PI flowcytometry を用いて Apoptosis 誘導を測定した。浮遊細胞を 15 分間 Annexin V-FITC に接触させた上 PI を加え、Annexin V-FITC 陽性かつ PI 陰性の細胞をアポトーシスと判定した。【結果】
収穫された付着細胞数は、Be11 では Hypoxia で 44 時間、Acidosis で 5 日間、Starvation で 5 日間、MeWo では Hypoxia で 144 時間、Acidosis で 4 日間、Starvation で 6 日間の持続培養で減少する傾向が見られた。約半数以上の細胞がフラスコ底から遊離する培養時間において、付着細胞全体に対するアポトーシスの割合を計測したところ、Be11 では Hypoxia で 6%、Acidosis で 10%、Starvation で 49%、MeWo では Hypoxia で 84%、Acidosis で 4%、Starvation で 5% であった。【考察と結論】
本実験系では、Hypoxia、Acidosis、Starvation の培養条件によるアポトーシス誘導を別個に検討した。p53 野生型の Be11 では、Hypoxia と Acidosis 培養において顕著なアポトーシスが観察されたが、Hypoxia においては比較的低頻度であった。一方、 p53 変異型の MeWo では逆に Hypoxia においてのみ顕著なアポトーシスの出現を認めた。以上より、Hypoxia と Acidosis 及び Starvation によるアポトーシス誘導は、p53 status との関連において解離が認められ、環境因子に起因するアポトーシスについても p53 依存性に関して複数のメカニズムの存在が示唆された。